CMディレクター仲野哲郎の「シズル」って何?98
今日は、「おいしさの科学」佐藤成美さん著からメモします。
この本は、2015年に開かれた日本科学会主催の公開講座「科学と食」。
その中で、8名の食の専門家から「おいしい」を語ってもらったものを編集し書籍化したそうです。
色々な立場の専門家が考える「おいしい」。とても興味深い話が沢山書いてありました。
「おいしさ」の科学 素材の秘密・味わいを生み出す技術 (ブルーバックス) 講談社 (2018/3/15)
今日はその中から「美味しさの評価」についてメモします。
おいしさは人によって違います。だれかがおいしいといったものを別の人がそう感じるとは限りません。
人によっておいしさの感じ方が違うのはなぜでしょうか。
おいしさは、食べるための行動を促す感覚です。
先に述べたように私たちは生まれながらにして、食べてもいいもの、身体に必要なものはおいしく感じます。
さらに、幼いころに繰り返し食べ、経験を重ねたものは無意識のうちにおいしく感じます。
これはその土地の食文化や両親や家族がどんなものを食べていたかの影響を受けています。
「おふくろの味」がおいしいのは子供のころから食べ続けている味だからです。
その機構はよくわかっていませんが、マウスを使った実験から、特定の時期の食事経験が大脳皮質の食関連領域の神経回路を大きく変化させる可能性のあることが示唆されています。
また、苦いコーヒーが大人になっておいしく感じたり、嫌いなものが好きになったりすることがあります。
これは、物心がついてから食経験を重ねることで、また情報や学習、生理機能の変化などによって獲得するおいしさです。
そもそも私たちは初めて食べるものに対して警戒心を持っています。新奇な食べ物は有毒かもしれないので、潜在的に危険なものとして用心しながら、少しだけ食べます。
これを「食物新奇性恐怖」といいます。赤ちゃんや子供のころは食べる経験が少なく、初めて食べるものばかりですが、
だんだん味を覚え、食べ物に慣れると、この食べ物は安全だと認識し、おいしく感じるようになります。
大人になるといろいろな食べものを好きになるのは、食経験を重ね、新奇性恐怖がなくなっていくためです。
一方、もしも何かを食べた後に下痢や吐き気など不快な思いをすると、その食べ物が嫌いになり、食べなくなります。
これは「味覚嫌悪学習」といい、内臓の不快感と味覚の情報が脳の中で合わさって、先天的に好きな甘い味でも嫌いになってしまうのです。
このような後天的な味覚嫌悪学習には脳の扁桃体の機能が関わります。
扁桃体は味覚をはじめ、嗅覚や視覚などあらゆる五感の情報が集まるところで、「快」「不快」「好き」「嫌い」などの価値を判断しています。
内臓の感覚情報も集まってきますので、扁桃体の中でそれらの情報が処理され、その味を嫌うように記憶づけられます。
好き嫌いによる食べ物の選択は生き残るための戦略の一つと考えられています。”
二日酔いで不快なはずのお酒。でも止められない人がいるのは大変不思議な現象ですよね。