CMディレクター仲野哲郎の「シズル」って何?107
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今日は、トヨタ・iciなどの多国籍企業のデザインコンサルティングもしている
オックスフォード大学の心理学者 チャールズ・スペンス著
「おいしさ」の錯覚 (角川書店)
からメモしていきます。
2018年初版なのですが、正直「もっと早く読みたかった〜」と感じました。
世の中はどんどん進化していきますからね。。。
「おいしさ」の最前線を見ることができ、とても勉強になりました。
「おいしい」という感情は錯覚?
とても面白い本です!!
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とても面白かった「おいしさ」の錯覚も今日で最後のメモです。
今日は記憶に残る料理についてです。
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”何度も私と一緒に仕事をしたことがある一人のシェフが、独自の実験を行ったことがある。
彼がつくるすばらしい料理のどんな点が食事客の記憶に残るのか知りたいと考えてのことだった。
そのシェフは、レストランで食事をしたゲストたちに、訪問から二週間後に電子メールでアンケートを送った。
そして、ショックを受けた!
アンケートに答えた人々は、店での食事を楽しんだことは思い出したが、
どんなものを食べたか、正確なことはほとんど覚えていなかったのである。
(中略)
人々の記憶に残るのは(料理ではなく)感情の動きであり、
彼らが気に入るのは”体験”だ、ということである。”
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これは、本当にショックでしょうね。。。
味はほぼ覚えていないんだから。
「おいしさ」が錯覚である。ってことのとても重要な部分ですね。
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次は、記憶に残す方法が書かれています。
”“すばらしい味の記憶"をデザインしようとするなら、初頭効果に(そして親近効果にも)
気を配るべきだろう。たとえば、もし私がメニューに載る料理の名前など、
いくつかの項目からなるリストを覚えるように求めたら、あなたはリストの最初と最後の数項目は
思い出せると予想できる。つまり、逆に言うと、リストの真ん中の項目はもっと目立たなくてはならな
い、ということになる。この意味では、シェフの多くがコース料理の一品目に(それともちろん
アミューズ・ブーシュにも)とくに工夫を凝らすのも不思議ではない。
どの料理が人々の記憶にもっとも残りやすいかわかれば、その料理の腕前を上げようとするのは、
人々にできるだけいい印象(または記憶)をもって店を出てもらうための有効な時間の使い方だと言える。”
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最初と最後の印象だけよければあとは、まあまあでも大丈夫!
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“食事を記憶に残す方法の一つ。
思いがけないプレゼントだ。たとえばアミューズ・プーシュ。
食事客が注文も予想もしていなかった少量の・前菜を出すなんてどうだろう。
そうしたポジテイプな驚きは、人々の記憶に長くとどまりつづけるに違いない。“
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ポジティブな驚きを与える。
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“食事を記憶に残るものにするもう―つの方法は、料理にまつわる物語を話して聞かせることだ。
その優れた例として、《ザ・ファット・ダック》を挙げることができる。
《ザ・ファット・ダック》では食事客に一枚のマップ、ルーペ、そしてアヒルの足が渡される。
すると、たとえ料理の多くがいつもと変わらないものであってもなんだか旅行をしている
ような気分がしてくる。
物語を付与することで、実際にはシェフの得意料理の寄せ集めかもしれないコース料理に、
ある種の意味的なつながりが生じる。
(中略)
特別な料理の場合は、
食事客にメニューのコピーを持ち帰り用に手渡すのもいいだろう。
私の自宅のキッチンの壁にはすばしかった料理のメニューが、
額縁に入れて飾られている。
壁にあるメニューの料理の説明を読むだけで、楽しかった思い出がよみがえるほどだ。
(必ずしも味の記憶ではなく、むしろ食事全体の思い出料理はこんな味だったかな、
といった想像が刺激される)“
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“食事の最中にメニューを提示するのも、印象を長続きさせるという意昧では、とても効果的だ。
(中略)
食事の記憶をよりよくするための最後の提案は、「終末効果」として知られる現象と関係している。
どんな経験においても、記憶というものは最後に起こった物事に大きく左右される。
食事も例外ではない。したがって、食事を高評価なもので終えると、楽しい思い出になる。”
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物語を感じせさせる。と言うのも一つの方法ですね。
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”スターバックスでは、コーヒーを注文するたびに、名前を聞かれる。そして注文したものを受け取ると、
カップの側面には、自分の名前が書かれている。
混雑時に混乱を避けるためと思えるかもしれないがこの習恨は利便性のためだけに行われているのではない。
このような「個人化」がスターバックスのの企業方針なのだ。
個人化をすることで、願客の体験がよりよいものになると考えているのだ。
確かに、自分の名前が書かれていればその飲み物が自分のためにつくられたような気がする。”
(2014年には、コカコーラがラベルに名前をプリントした商品を発売したことも個人化を目的としたモノです)。
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“人は自分でつくったものは、ほかよりも価値が高いと考える傾向がある。
マーケティングの専門家たちはこれを「イケア効果」と呼んでいる。
言い換えると、自分で組み立てた木のテーブルは、それを組み立てた者にとっては
もとから組み立てられている製品よりも価値が高いのだ。
(中略)
あなたがつくった料理は、あなたにとってはいつもよりおいしく感じられ、その違いは
手間をかければかけるほど大きくなる。”
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自分事化させる。これもいい方法ですね。
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最後は、レストランの未来について書かれた文章です。
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“レストランの料理の役割は、かつての栄蓑補給から、芸術的な表現の方法へと変わりつつある。
いわば、レストランは舞台になった。世界トップクラスのレストランのホールスタッフやシェフは、
役者やマジシャンの役割を演じるようになったのである。“
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モノから体験に流行が移り変わっているように、レストランも体験型になっていくことが予想されています。
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“
未来がどんなものであれ、
料理アーティストと最新の技術やデザインの相互作用を追究することこそが、
私たちの目標に到達する最短の道だと確信している。
結局のところ、人々に何が体にいいか、何が地球にやさしいかを教えるだけでは、
行動を変えるには不十分だということに気つかなければならない。
人々をより健康でより持続可能な食生活の方向に誘導するには、ほかの方法
—私たちの食の知覚は口ではなく、主に脳で行われているという事実にもとづくアプローチ—
が必要とされている。
私が予想するに,今後「フードハッキング」という考えがますます身近になっていくだろう。
(中略)
有名シェフのアドニ・ルイス・アドゥリスが言ったように「喜びは口の中だけで感じるのではない」のであり、
実際には主に精神で感じられるのだ、と多くの人が気づくことで、ほんとうの意味での発展が始まるのだ。”
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食べ物は口で「おいしさ」を感じると思いがちですが、
この本を読んでいくにつれて、感覚全体で、脳で、体全部で感じているんだとわかりました。
本当に面白い本でした。

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