CMディレクター 仲野哲郎の「シズル」って何?127
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今日は、元ミシュラン3つ星、オバマ大統領と安倍晋三前首相との会談でも使用されている
すきやばし次郎の小野治郎が寿司について語った著書、
「すきやばし次郎 旬を握る」からメモしていきたいと思います。
すきやばし次郎の秘密を隠すことなく語る次郎さん。
とても良本でした!
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では、さっそく。
“上手に加工するということは、コハダのタチをじっくりと見て、振り塩や酢締めの加減を決めることで、
特に、シンコ(コハダの稚魚)は秒争いです。脂の多い少ないがありますよね。
身の厚い薄いがありますよね。大きい小さいがありますよね。
これらを全部ひとまとめにして、同じ時間、酢に漬けたりしたら、喉が鳴る鮨は絶対に握れない。
ちっちゃいシンコだからこそ、大きさやタチが微妙に違う一尾一尾の酢ーに二秒でも三秒でも差をつけて、
全部のシンコを同じ味にするんです。
私は、そこのところを、ウチの若い衆にもの凄くうるさく言っている。
そこまでは、努力次第でどうにでもなりますからね。”
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小さいことの繰り返し。ですね。。。
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“「オレは間違いない、お客の舌が間違ってる」が間違いなんですよ。
ウチの若い連中に、私はそれをよく言うだけどね。
今朝も、こんなことがあったんです。シンコの締めが弱そうに見えた。試しに食べたら案の定です。
これでは酢飯とのバランスがいかにも悪いから、「塩を少し強めにしろ」って若い衆に言いました。
ところが、何回やり直しても気に入らない。
で、「もう一回」、「もう一回」と味塩梅を試しているうちに、お昼に握る分が足りなくなってしまった。
そんなことがよくあります。「バカ高い走りのシンコを、そんなに食べてどうするの?
って、よく言われますけれども、鮨屋のオヤジが味を見て、「これは旨いッ!」と自信を持って
握らなかったら、第一、お客さんに失礼じゃないですか。(中略)
だから、私は一日に何回、ネタの味見をするんだろう。
特にコハダは、朝に食べて、お昼に食べて、夕方に食べて、明日の締め具合を見るのに
暖簾を下ろしてから食べる。
自分が納得するまで、こうして食べ込んでおけば、お客さんは決して「不味い」とはおっしゃらないでしょう。”
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自分が美味いと思うモノをお客さんに出したい。そんな心が良いんですよね。
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“スミイカは成長の速度がとっても早いんです。子イカの時代こそ、一杯(匹)で一貫握る「丸づけ」、
一杯で二貫の「割りづけ」サイズと小さいですが、夏が終わって秋が深まる頃には、
もう魚屋さんで見かける、あのスミイカの大きさに育ってしまいます。
だから、チャンスを逃すと来年まで食べられない。「まだか、まだか」と待ち焦がれる方が多いのは、
そのためです。
子イカの半透明で薄い身を「丸づけ」に握ると、ワサビの緑が透けて食欲をそそる。
スミイカの特徴である歯切れとコクに乏しいのは確かですが、その代わりに、はかない歯応えと甘さ、
「丸づけ」に握った鮨の形の美しさがあります。
この特徴を生かすには、何よりも鮮度を守ることが肝心で、
鮮度を守るためには、朝のうちにテキパキ処理を済ませて、使い切ることです。
次の日まで置こうものなら、せっかくの半透明が生っ白くなるし、歯切れも悪くなりますからね。”
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美味しそうな文章ですね。
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“これはもう、長い長い経験です。年がら年中、触ってますからね。
「あッ、これはいかん」。シャリ鉢に手を入れた瞬間にわかるんです。
お客さんの舌は握り加減で騙せるにしても、自分の手は誤魔化せませんから、大急ぎで、
次のを炊きにかかることになります。
私のは、鮨の外っ側だけを固める握り方なんですね。中っ側はそんなに硬くしないんですけれども、
澱粉質が多いと、表面だけ硬くという芸当が出来ません。
軽く握れば形が崩れてしまうし、かといって力を入れると、今度は芯まで硬くなる。
ひどい時になると、たった七、八合のシャリが、三合まではいいんです。いいんだけれども、
四合近くなると団子になって来る。”
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以前、次郎さんの映像を見た時(映画だったか?ドキュメントだったか?)、
お寿司が板に触れた瞬間、スッと少し下に沈む。
それを、横から写している映像があって、その映像は鮮明に覚えています。スッと。
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“昨今、出前や皿盛りの一人前には、「巻物コミで十貫」つけるのが決まりみたいになっていますが、
これには、わけがあったんですね。
戦争が終わると、すさまじい食糧難です。鮨を握れる状態じゃなかったし、
闇米を使おうものなら手が後ろにまわる。そこで、ある鮨屋の知恵者が考えたんですよ。
お客さんに配給米を持って来て貰って、その米と引換えに鮨を握ったらどうかとね。
鮨屋はネタ代と加工賃を頂戴します。つまり、握り鮨の「委託加工」。
これならば、米食販売禁止の法律に引っ掛からない。
その昭和二十二年当時の申し合わせで、巻物を勘定に入れて、一合につき十貫握ることになったんです。
これで一人前だから、握りはぐっと小振りになりました。”
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寿司の歴史ですね。1合を10貫。約束事だったんですね。
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“「八個しか食べないのに、何とかいう店で八万円も取られた」とある女優がテレビで怒ってました。
その時、私は「何時間、彼女は店にいたんだろう」って思ったね。それは、値段だけを考えれば、
一貫一万円はベラボーだと誰でも思うけれども、その店でダラダラ喋って三時間いたとします。
そうなると八万円なんて安いものですよ。三時間あれば、お客さんは二回転も三回転もする。
忙しい鮨屋ならね。その儲けおひれを奪い取ったんですから。“
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ちょっと思い付かない考え方でした。店から時間も奪うってことに少し鈍感になっている気がしました。
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“そうだなあ、半分くらいのお客さんはオヤジを食ってるのかも知れないなあ。
たとえば、ウチに新しく腕のいい職人が入って、私と同じ鮨を握ったとしても、
お客 さんは「アイツ、大したことないぞ」と思うはずです。
二十年も三十年も長くお見えになるお客さんになればなるほど、「二郎の方が腕は格上である」
とおっしゃるに違いない。
小野予約をして下さる方は、鮨を食べるついでにオヤジを食べに来るのだから、
どうしても、「一緒につけ場に立っているヨシ(長男の禎一)に握らせたら悪いかな。
握れる間は私が握らなきゃいけないかな」ということになっちゃうんです。
自分の手の、続く限り、このお客さんにも握り、あのお客さんにも握りになって、
何時でもテンテコ舞いして走り回り続けることになる。“
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寿司を食べる前に、次郎さんの寿司を食べに行ってるんですもんね。
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“これから仕込みの総てをご覧に入れるのは、「ああ、そうか、カツオが一味違うのは、藁火で紅るからなのか
「アカ貝のヒモに付いている貝柱が、ヒモと同じ厚みに切り揃えてある。だからこそ握った姿が美しい」
などと、私どもの仕事ぶりを理解して下されば、鮨の旨さも倍増すると思うからです。
「こんな秘密まで大公開していいの?」とハラハラする方もおられましょう。
でもね、鮨の味は、言うならば、仕込みの工程の、最後に踏み出す"千里の一歩” で違います。
ですから、ここで公開したプロセスを徹頭徹尾、再現しても、絶対に同じ味になるはずがない。
実は私は、そう確信しているんですよ。”
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努力と経験と自信。なかなかこんな事は言えません。
次郎さんがなぜ世界中のシェフから尊敬されているのか?
その一部が少しだけ理解できた気がします。