CMディレクター仲野哲郎の「シズル」って何?73
今日のメモは山本隆さんの美味の構造-なぜ「おいしい」のかからのメモです。
この本。「おいしい」について次々とネタが書かれていて、一気に読み込んでしまいました。
大変、勉強になりました。
”「あなたにとって」『おいしい』とはどういうことですか?
あなた自身の『おいしさ』の定義を思いつくまま述べて下さい。
この調査結果から判断すればおいしさは二つに分けて考えた方がよさそうである。
―つは、体が必要としているものを摂取したときの快感であり、
他の一つは、口腔感覚とくに好ましい味覚を感じたときの快感である。
前者は、「空腹感やのどがかわいたとき」に水やジュースなどを飲んだり、
「寒いとき」に温かいスープやお茶を飲んだときである。
これは体が要求しているときにのみ好ましく、摂取により要求が満たされた後は
原則としておいしいとは思わなくなるものである。
それに対して、後者の好ましい感覚をを生じさせる食べ物は
「甘いもの」「五感のバランスのよいもの」であり、
「飽きることなく食べたい」と思い、「満腹時でも食欲をおこす」ものである。”
満腹でも食べたいもの、ありますよね。
”同じ物を食べても、おいしさ•まずさは体内の栄養状態により変化する。
とくに、体内で一定に保つ必要のある物質が欠乏した場合には、その効果は顕著である。
お腹が空くと何を食べてもおいしく感じることは日常よく経験する。
お腹が空いているという感覚を生じさせる大きな理由の―つは、
血液中のブドウ糖(血糖といわれる)の量が少なくなることである。
ブドウ糖はエネルギー源であるから、体が働けばどんどん消費されてしいく。
車にとってのガソリンと同じで、走れば走るほどなくなっていくのである。
脳の間脳にある視床下部は、血液中の種々の物質の濃度をモニターするところであるが、
その外側部(外側野)にある服内側核にある細胞集団は血液中のブドウ糖量が少なくなると興奮する。
そして、そのすぐ内側の部分(腹内側核)の細胞集団は逆に血糖値が高くなると興奮する。”
”山登りやハイキング、スボーツをして肉体的に疲れたとき
チョコレートやキャラメルなどの甘いものが欲しくなるのは、
糖分、すなわちエネルギー源であるプドウ糖を体が要求しているからである。
身体運動後の味の嗜好性変化を実験室で調べるため、甲子園大学の堀尾強助教授らは、
大学生に自転車エルゴメーターをこがせて運動をさせた。
そして、食塩(塩味)やグルタミン酸ナトリウム(うま味)に対する嗜好は変化しないが、
蕪糖(甘味)の嗜好が増加することを確かめた。
また、肉体的疲労時には甘いものの他にすっぱいものもおいしく感じる。
興味深いことに、すっいものならなんでもいいというわけではなく、
クエン酸、アスコルビソ酸はおいしくなったが、aーケトグルクル酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸は変化がない。
野球部やサッカー部の練習時にレモンを用意するのはマネージャーの役目の一つである。
これはレモンのすっぱさのもとであるクエン酸が、
疲れた体を元気にする助っ人の役割をしていることと関連している。
酸素を使って糖や脂肪を酸化し、大量のエネルギーを生産する代謝系(TCA回路)の
中間体であるクエン酸を補給することは、エネルギー産生に好都合なのである。
このように体が要求するときは、本来は好ましくないはずの強い酸をおいしいと感じるのである。
同じ疲労でも精神的な疲れもある。
近年のコンピュータ社会では長時間ディスプレーに向き合って作業をすることもあるし、とにかく社会に出ればストレスが多い。
サントリー研究センターの中川正博士らの実験では、
一日会社で仕事をして精神的疲労状態になったことを想定して、
コンピュータによる「文字探索」という作業を行わせた。
精神的な疲労を与えたその後、甘味、酸味、苦味の感受性をテストしたところ、苦味だけが弱く感じられた。
そのときの唾液成分を調べると、苦味抑制作用のあるリン脂質が増加していることがわかった。
同様の精神的ストレスを与え、女子大生を対象に調べたところ、特別に作った苦いチョコレートがおいしくなったと評価した。
つまり、ストレスを負荷することにより、苦味の感覚が低下するとともに、苦味を快く感じるようになった可能性がある。
彼らは、被験者に自転車エルゴメーターで10分間の運動をさせて肉体的疲労の効果も調べているが、
このときは酸味のみに感受性の低下が認められた。
そして、このときの唾液を分析すると蛋白質かんしようのう含量が増大していた。
蛋白質含量が多いと唾液の緩衝能が高まり、酸味物質が口に入っても酸性度の低下が抑制されて
酸味が感じにくくなると解釈できる。
中川氏らの研究では、疲労時の味覚感受性や嗜好性の変化を唾液成分の変化に結びつけた点が面白い。
サラリーマンが仕事の後でグイッと飲むビールがおいしいのは、ストレス社会を反映しているにちがいない。
納得の内容ですよね。
苦いものが美味しく感じられた時は、精神的ストレスが強い時。
酸っぱいもの、甘いものがおいしい時は、肉体的に疲れている時。
次回に続く。