CMディレクター仲野哲郎の「シズル」って何?74

   

今日のメモは山本隆さんの美味の構造-なぜ「おいしい」のかからのメモです。

広告に関することが書いてありました。

この本。「おいしい」について次々とネタが書かれていて、一気に読み込んでしまいました。

大変、勉強になりました。

   

”この観念的要因とは、先入観念とか情報操作によっておいしさ・まずさは影響を受けるということである。
明らかな味(好み)の違いがあれば話は別であるが、

どの銘柄のビール、ジュース、日本茶、ウーロン茶、紅茶がおいしいかといった判断は、銘柄間の味の違いが微妙なときほど観念的要因の影響を受けやすい。
消費者がどれに手を出すかは、上手な宣伝がもっとも有効である。
宣伝広告なしに黙って店頭に並べておくだけで消費者に味の評価を期待するのは無理であろう。
しかし、このことを食品会社の人に言うと

「最初のとっつきはそうかも知れませんが、最終的によく売れて生き残る商品はやはり味ですよ」ということになるのではあるが……。
実際には、美味しさの評価は難しい。

同じコーヒーの中でも「違いがわかる人」や「知っている人」が飲むものならおいしいはずだといったように、自分にできないおいしさの判断を他の適任者の判断に任せようということになる。
有名クレント、俳優、歌手がおいしそうに食べたり飲んだりするコマーシャルがあるが、

この心理を期待したものである。
かつて、S社のオレンジジュースのコマーシャルに次のようなものがあった。

   

日本ではオレンジジュースであればすべて、「バレンシアオレンジジュース」と表記できます。

しかし、一口にオレンジジュースといっても、バレンシア種だけでなく、ハムリン、パイナップル、ペラ、福原オレンジ等々、たくさんの種類があります。
原材料からおいしさにこだわるS社は、このうち、ジュースに最もふさわしいとされるバレンシア種だけを、

贅沢に100%使ってジュースにしました。
そのピュアなおいしさ、まずは一度お試し下さい。

   

ビールや酒の銘柄を当てるのが難しいように、類似のオレンジジュースの違いを区別するのも難しい。

正面きって味の違いで売り込むのは決して容易ではない。
つまり、スーパーマーケットに並べておくだけでは大部分の市民にとっておいしさの差は認識できないので、

このような理屈めいた文章で進めるのも一つの方法である。

”このような一種のブランド志向に訴えた情報操作や、情報誌に紹介された店、

行列のできる店の食べ物をおいしいと思う心理(うわさ、思い込み)も観念的要因によるものである。
都内に連日長蛇の列をなすおいしいと評判のハンバーグ専門店がある。
本当においしいのかどうかをテストするため、その店のハンバーグ、インスタントのハンバーグ、

ある主婦が自宅で作ったハンバーグを並べて何人かの人を集め、どれがおいしいかを比べさせたところ、

ほぼ均等に分かれたことをテレビ番組でみたことがある。
絶対的なおいしさの尺度を持たない多くの人々にとって行列のできる店のハンバーグを食べたとき、

たとえ自分の予期した味と違った場合でも、

「へえー、この味がおいしいのか。おいしいとはこういう味なのか」と自分を納得させてしまうことすらありうるのだ。
甘い、塩からい、苦いなどといった単純な味ならいざ知らず、複雑な味のミックスされた料理、

とくに初めての料理になると、もう自分自身でもおいしいのかどうかわからないというのが本音ではなかろうか。
出された料理を食べたとき「おいしい」「まずい」の白、黒の判定をすぐに下すのは無理なことも多いはずである。
灰色の味があっていいし、わからない味があってもいい。

しかし、それほどあいまいだからこそ情報に流されるという皮肉なことにもなるのである。

   
以前はやったことばに、マインドコントロールというのがある。

宗教集団の教祖様の教えが信者の精神の中に浸透し、
その心を元の状態に戻すのが困難なとき、マインノドコソトロールを解くのが難かしいなどという。
おいしさに関わるマインドコントロールの例をさらにいくつか挙げてみよう。

   
大妻女子大の青木宏教授(現・名誉教授)によると、
「こちらは英国王室御用達の紅茶、そちらはそれに似せて作ったケニア産」

と説明して女子学生においしさの評価をしてもらったら、前者を好ましいという意見が多数をしめた。
だが実際はどちらも全く同じセイロン紅茶だった。

   
朝日新聞のコラム(一九九六年一月二八日)に天野祐吉氏がいみじくも次のように書いている。

一番搾りがあんなに売れているのは、ビールがうまいからではない。ビールもうまいけれど、名前がうまいからである。同じ中身でもあれが三番搾りという名前だったら、たぶん、いまみたいに売れてはいないだろう。

我々の食行動は、このように人のうわさ、情報、ブランド志向、先入観念、宣伝広告などに大きく影響を受ける。
大脳のあまりに発達した人間は、食欲、情動といった本能行動まで自分の意志でコントロールしてしまうのである。
以上、「これはおいしいもの」と信じれば本当においしくなるという例をいくつかあげた。
つまり、その気にさせればいいのである。

すでに述べたように、我々の脳は、特に食べ慣れていない食物に対する微妙な味、おいしさの違いを即座には判断できない性質をもち、

皮質下の快質下の快・不快の評価中枢はあまりに発達しすぎた大脳皮質連合野から強力な影響を受けるのである。”

   

プライミングという現象がある。

これは、以前にある経験をしておくと、次に類似の場面に遭遇したとき、その経験が大きく影響を及ぽすことである。
たとえば、テレビで、あるインスタントラーメンのコマーシャルを見ていると、

スーパーなどでインスタントラーメンを買うとき、その商品を選びやすいといった現象である。
これは、一種の意識にのぼらない記憶と考えられる。”

   

   

どうだったでしょうか?

おいしい、美味しくないを判断するは難しいことです。

難しい判断は、味だけでなくても、専門家・有名人に判断を任せたいと思いませんか?

そして、プライミング。無意識に行動してしまうそうです。

次回に続きます。

美味の構造-なぜ「おいしい」のか 山本隆さん著③ | 2021 | 未分類 | Comments (0)