CMディレクター仲野哲郎の「シズル」って何?⑦
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今日も「食べ物の流行」について考えてみようと思います。
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前回は敗戦から1970年まで。今回は1980年代からベブル崩壊(1993年頃)までいってみます。
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出典:毎日新聞
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世の中全体が浮かれたバブル時代。新自由主義経済への道が開かれた時代です。
コピーライターが時代の寵児としてもてはやされ、広告文化が開花したり、
雑誌文化が興隆をきわめ、メディアが教えるスポットに若者たちが群がり、
マニュアルで人が動き、メディアが物凄く力を持った時代ですね。
そんなバブル時代は、食べ物の流行もノリノリです。
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「ファッションフードあります」(2013/紀伊国屋書店)
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著者は、畑中三応子さん。
料理書編集者、食文化研究家。1958年、東京都出身。90年代に料理ムックシリー『暮しの設計』編集長。手がけた料理書は200冊以上。『体にいい食べ物はなぜコロコロと変わるのか』(KKベストセラーズ)。など
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この本の面白いところは、流行した食べ物を「ファッションフード」と名付け
ポップカルチャーの一部として、時代を追いながら記録していくことで
「近代の食物史」になっている所です。
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なぜ食べ物に流行が起こるのか?
この新しい目線に度肝を向かれました。
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出典:GOOGLE JAPAN
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この本を読みながら書いていこうと思います。
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1980年代初めから。箇条書きでいきます。
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●DCブランドのデザイナーブームと足並みを揃えるようにシェフブームが到来します。
60〜70年代にフランスで修業したシェフが帰国、フランス料理店を次々にオープンさせます。
勝又登さん、井上旭さん、高橋徳男さん、石鍋裕さん、鎌田昭男さん、熊谷喜八さん、
三國清三さん、平松宏之などのスターシェフが登場し、レストランもシェフもブランド化されていきます。
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●今まで表に出てこなかった、山本 益博さんの様な料理評論家も出てきます。
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●街のデパートでは高級デリカテッセンが次々オープン。お惣菜もバブル路線へ変わっていきます。
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●1983年には、グルメ漫画の金字塔「美味しんぼ」の連載開始。グルメブームの裾野を広げます。
出典:Googleイメージ
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●1988年.Hanakoが創刊。トレンドのマニュアル化が進みます。
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●1986年に発売された文春文庫「スーパーガイド東京B級グルメ」という本により、
今では普通に使われているB級グルメという言葉も登場します。
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●成人病予防、高齢化の到来で健康が意識されるようになります。
1982年「ビタミンバイブル」が翻訳出版されビタミンブームが到来。
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スポーツのファッション化によってポカリスエットを始めとするスポーツ飲料が流行。
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アルファルファなどのスプラウトをヒントにしたかいわれ大根も一大ブームを引き起こし、
「ビタミン野菜」、「食べるビタミン」ブーム到来します。
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1983年には、「六甲のおいしい水」が販売され名水ブームに火をつけます。
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バブル期を象徴する「リゲイン」「グロンサン」などの栄養ドリンクも流行。
「24時間働けますか」。今、広告で言ったら即、お蔵入りですね。
出典:Googleイメージ
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豆乳ブーム。脂肪を分解する効能で人気になった烏龍茶ブーム。
ファイブミニの食物繊維ブーム、腸内ビブィズス菌を活性化するオリゴCCブーム。
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特定保健用食品1991年、栄養機能食品2001年に制度化されます。
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●外食では、欧米中心ブームからの脱構築が始まります。
まずは、アジアエスニック料理ブーム。
カラムーチョ、木村屋の辛口カレーパンなどの激辛ブーム。
ストレスとは無関係な元気な日本が垣間見えますね。
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●アルコールの摂取量が90年には70年に比べて2倍になります。
完全にバブルに浮かれていますね。
養老乃瀧、庄屋、つぼ八、村さ来、学生が入りやすい大型チェーン大衆居酒屋が続々オープン。
カクテル、ちゅハイ、本格焼酎ブーム、ボージョレームーボーフィーバー。おやじギャル。
増税によって売り上げが下がった1986年から低迷を盛り返そうとビール戦争が始まります。
麦芽100%のモルツが発売。
87年には、スーパードライが発売。
激辛ブームの気分ともあってドライブームを支えます。
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出典:Googleイメージ
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●デザートの業界ではダイエット願望のある女子からケーキも甘くないコトが受けます!
「このケーキ、あまくなくって美味しい」。まさかの台詞。。。
飽食の時代の象徴の様なブームです。
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高級デザートの大衆化。
プレミアムアイスクリーム、84年ハーゲンダッツ、85年ホブソンズがオープンします。
その中で食感、という言葉も生まれます。
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ムースを使ったプチガトーによる新食感ブーム。
ここから洋菓子とパンは食感が重要視されるようになります。
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●199o年、イタめしブーム。
アルマーニ、カッシーナ、アルフレックスのミラノ製品。
世の中の気分全体がフランスからイタリア向いていきます。
その流れで「イタめし」も流行に。
フランス料理への劣等感から庶民を解放してくれたイタめし。
日本人が初めて居酒屋気分で食べられる西洋料理がイタめしだったようです。
そこからのティラミス一大ブーム。
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※日本でイタメシブームが起きたのは1980年代末。このブームの影には
イタリアの誇るパスタ産業がチェルノブイリ汚染によって売りあげが低迷し、
新しい開拓先を日本に求めたからだったようです。
当時、トルコから地中海に至るまで激しくセシウム汚染され小麦や紅茶が売れなくなり、
警戒心の薄い日本に持ち込まれたようです。完全に踊らされちゃってますね。。。
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●1988年「サロン・ランバン・キャビアバー」「ラメゾン・ド・キャビア」という
シャンパンでキャビアを食べまくるという常軌を逸したお店が登場しことも記しておかなくてはいけません。。。
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●外食産業・メディアはポストティラミス探しを始めます。
スイーツブームが食の流行の先導役になりました。
チーズ蒸しパン、クリームブリュレ、焼きたてチーズケーキ、チェリーパイ、タピオカ、ナタデココ、パンナコッタ、カヌレ、ベルギーワッフル、クイニーアマン、エッグタルト。
次々と新アイテムが登場し、あるものは今でも残り、あるものはパッと消えて行きました。
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特にナタデココブームは、生産地フィリピンに膨大な負債と無用な巨大工場、熱帯林の伐採と
廃棄物による環境破壊。負の遺産を多く残しました。
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1980年代はとにかく食べ物も経済と同じく華やかで元気です。
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この辺りから、日本の食べ物は
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「舌ではなく頭で。情報で食べるようになっていくんですね。」
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食べるコト=生命維持活動。→食べるコト=娯楽。になったのもこの時期でしょうか?
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長くなってきたので、次はバブル崩壊後のブームに。。。