CMディレクター仲野哲郎の「シズル」って何?76
今日のメモは山本隆さんの美味の構造-なぜ「おいしい」のかからのメモです。
辛いが病みつきになる理由がとても面白いです。
この本。「おいしい」について次々とネタが書かれていて、一気に読み込んでしまいました。
大変、勉強になりました。
”痛みを生じさせる刺激は侵害性刺激と一般にいわれるように、体に害を与えるものであるから、
それを避けるのが本来の生体反応である。
ところが、述べてきたように痛みに関係するはずのカプサイシンの入った食べ物を
我々はなぜ好きになるのだろうか。
最も妥当な考え方は、たぶんカプサイシンなしでも結構おいしい食べ物があり、
そこにカプサイシ名が添加されることによって、より一層おいしいものに増強されるということである。
つまり、カプサイシンそのものは、まずいものをおいしいものに一転させる魔法の薬ではない。
このことはキムチの中のカプサイシンに限らず、カレーがおいしいのは単に辛いからではない。
もっといえば、コーヒーやビールが好きなのも単に苦いからではない。
それを含めた全体の風味がおいしいからである。
体に障害を受けて痛みが生じたとき、危険を察知して逃避するというネガティブな生体反応と同時に、
その痛みにひるんではならない、それに立ち向かおうとするボジティブな生体反応も生じる。
敵と相まみえる武将は皮を切られても肉を切らんとし、肉を切られても骨を切らんとして敢然と相手に立ち向かう。
敵と戦い終えて、気がついたら左腕がなかった、そして、それに気付いたとたん激痛を感じて意識を失ったという戦争中の逸話を聞いたこともある。
このような場面で、痛みを抑え、痛みがあることさえ忘れさせるのは、体内で分泌され、強力な鎮痛効果を発揮するβーエンドルフィンなどの脳内麻薬様物質(脳に存在するモルヒネに似た作用をもつ物質)なのである。
麻薬様物質は別の作用として、至福感、陶酔感、多幸感などの快感を生じさせ、嗜癖(しへき)を生じさせる作用がある。
痛みを感じたとき、体内に麻薬様物質が増えるのであるが、我慢できる程度の痛みが繰り返し与えられると、このような麻薬の魔力のとりこになってしまう。
別のことばでは、習慣性、常習性、依存性、やみつきということになる。
麻薬様物質にはおいしいものをよりおいしくする作用があるので、本来おいしい食べ物にカプサイシンのような香辛料が入るとますますおいしくなり、やみつきになってしまうのである。
そしてより強い快感を求めて、中辛、辛口から激辛嗜好へとエスカレートしていくのである。”
なんてことでしょう!
辛いのは害だから本当は敵なのに、敵と戦うために脳内麻薬が出て、それを繰り返すうちに
辛いものが徐々に快感に変わっていく。
とても面白い仕組みでした。
次回に続く。